睡眠でお悩みの方

不眠症とは

眠れなくても一時的なもので、生活に支障がなければ問題ありませんが、日中に疲れが残り、集中力の低下やお仕事がうまくいかないなど日常生活に支障が出る場合は「不眠症」となります。

不眠症となる要因の例

生理的な要因

昼夜逆転、生活リズムの乱れ、部屋の明るさ、湿度、騒音、枕の高さなど、一工夫することで、睡眠の質が改善される場合もあります。

薬剤的な要因

コーヒーなどのカフェインの摂取やアルコールなども覚醒傾向になり、不眠の原因となることがあります。

内服薬でもステロイド剤や市販の風邪薬の中にもエフェドリン(気管支を広げる作用)が含まれるものは覚醒を促し、不眠をきたす場合もあります。

身体的な要因

体の痛み、咳、呼吸苦、かゆみ、頻尿症状などでも睡眠の妨げになることもあります。

高血圧、糖尿病、肥満症などは睡眠時無呼吸症候群の原因となり、睡眠の質が下がります。

神経内科的な疾患ではむずむず足症候群、パーキンソン病などでも不眠をきたすことあります。原疾患の治療を行うことで解消される場合があります。

精神医学的な要因

日常生活のストレスや不安のみだけでなく、うつ病、不安神経症、統合失調症などの精神疾患からしばしば不眠を引き起こすことが知られています。

認知症による周辺症状から、昼夜逆転、夜に興奮し、不眠をきたしている例もあります。

睡眠中に夢と同じ行動をとってしまう、レム睡眠行動障害でも睡眠障害を満たす場合があります。

睡眠障害の種類

入眠障害

床についてから、眠るまでに長時間かかるタイプ。不眠症の中で一番多いです。

床にはいっても寝付けずに朝まで起きている。

中途覚醒

睡眠中に何度も目覚めてしまうタイプ。高齢の方に多いです。

PM11時に寝て、AM2時~3時ころに起きてしまう。

早朝覚醒

予定の起床時間よりも早く目覚めてしまうタイプ。うつ病の方に多いです。

AM7時ころに起床したいのに、AM4時、5時に起きてしまう。

熟眠障害

睡眠時間は足りているのに、起床時に疲れがとりきれなかったり、眠りが浅いと感じる。

8時間ほど睡眠はとれているのに、寝た気がしない。

対処法(非薬物療法)

  • カフェインや、アルコールが原因の場合はそれらを控える、飲む時間帯をずらすだけでもよくなることがあります。

    特にアルコール、とりわけ、寝酒などは、寝つきは良くすることがありますが、眠りの深さ、睡眠のリズムなどの睡眠の質を下げてしまいます。

  • 何時間睡眠をとらなければならないという固定観念で縛られると、余計に眠れなくなることがあります。ある方は8時間は睡眠が必要、またある方は、6時間で十分という方も見えます。個人個人によって適切な睡眠時間は異なりますので、気にしすぎないようにしましょう。

  • 昼夜逆転の場合を除いて、日中に眠気が来る場合、睡眠を我慢せずに30分程度であれば、夜間の睡眠リズムに大きな影響を及ぼすことはないと言われていますので、日中でも眠気が来たときは無理せずに休みましょう。

  • 起床後は日光にあたり、睡眠と覚醒のリズムをつかさどっている、体内時計をリセットさせましょう。日中の眠気の軽減や、夜間の快眠にうまくいく場合があります。

薬物療法

睡眠薬の種類:効果の持続時間別

超短時間作用型 6時間(入眠障害型に)

ベンゾジアゼピン系

  • ハルシオン(トリアゾラム)
  • リーゼ(クロチアゼパム)
  • グランダキシン(トフィソパム)

非ベンゾジアゼピン系

  • マイスリー(ゾルピデム)
  • ルネスタ(エスゾピクロン)
  • アモバン(ゾピクロン)
短時間型 6-12時間(入眠障害、中途覚醒型に)

ベンゾジアゼピン系

  • デパス(エチゾラム)
  • レンドルミン(ブロチゾラム)
  • リスミー(リルマザホン)
中間型 12-24時間(中途覚醒、早朝覚醒型に)

ベンゾジアゼピン系

  • ロヒプノール(フルニトラゼパム)
  • ベンザリン(ニトラゼパム)
  • コンスタン/ソラナックス(アルプラゾラム)
長時間型 24時間以上(中途覚醒、早朝覚醒型に)

ベンゾジアゼピン系

  • メイラックス(ロフラゼプ)
  • リボトリール(クロナゼパム)
  • ドラール(クアゼパム)
生理的な睡眠と覚醒に関与する物質(オレキシン、メラトニン)に関連する睡眠薬(熟眠障害型に)

オレキシン受容体拮抗薬

  • ベルソムラ
  • デエビゴ

メラトニン受容体作動薬

  • ロゼレム
  • ほとんどの睡眠薬がベンゾジアゼピン系と呼ばれる、GABA(ギャバ)の神経伝達を亢進させ、脳の活動に抑制的に働きかけ、眠気を誘発するお薬になります。

    抗不安作用や、抗けいれん作用もあり、不安を抑えたり、鎮痛効果もあります。

  • 副作用として、翌朝の眠気のもちこし、高齢者ではふらつき、転倒のリスクになることがあり、使用には注意が必要です。また長期の使用で、お薬に体が慣れてしまい効果が感じられにくくなる現象(耐性)も起こりやすいのが特徴です。

    非ベンゾジアゼピン系睡眠薬になると、耐性がつきにくく、ふらつきなどの副作用も少ないと言われています。

  • また、オレキシンという人間の覚醒を促す脳内物質の働きを弱めることで自然な眠りを誘発するオレキシン受容体拮抗薬、デエビゴという睡眠薬もあります。人によっては夢を見やすくなるという方もみえます。

  • またメラトニンという人間の生理的な睡眠を促す脳内物質を活性化することで、自然な眠りを誘発するメラトニン受容体作動薬、ロゼレムという睡眠薬も併用されることがあります。

    体質改善のようにゆっくり作用し体内リズムを整えていく作用があります。

  • もちろん副作用に関しては注意が必要ですが、これらの睡眠薬の組み合わせや使用するタイミング次第で、それぞれのタイプの睡眠障害に応じた睡眠の質を向上させることが期待できます。

睡眠や安心感を促す作用のある漢方薬

上記の睡眠薬にどうしても抵抗のある方には漢方薬を試してみるのもよいでしょう。

加味帰脾湯(気分落ち込みタイプに)

適応

  • 不眠
  • 不安・抑うつ
  • 動悸・焦燥感
  • 全身倦怠感

抑うつ、気分の落ち込みや不安感の解消にも使用することがあります。

柴胡加竜骨牡蛎湯(神経過敏、イライラタイプに)

適応

  • 不眠
  • 精神不安(イライラ・不安感)
  • 神経過敏
  • 頭痛
  • 動悸
  • ホットフラッシュ

イライラで昂った神経を鎮め落ち着かせる作用があります。

抑肝散加陳皮半夏、抑肝散(怒りっぽい、イライラして眠れない)

適応

  • 不眠
  • 怒りっぽい
  • イライラ
  • 頭痛

イライラで昂った神経を鎮め落ち着かせる作用があります。

認知症の周辺症状としての易怒性(イライラ、怒りっぽさ)を鎮めるのに使用することもあります。

酸棗仁湯(疲れ切って疲労している不眠に)

適応

  • 不眠
  • 神経症
  • 抑うつ
  • 不安
  • 焦燥感

体力が低下し疲労している不眠の改善に使用します。

半夏厚朴湯(気分の落ち込みに)

適応

  • 抑うつ
  • 不安
  • のどの違和感、詰まる感じ
  • めまい
  • 動悸

気分の落ち込み、喉のつまるような違和感の改善に使用します。

補中益気湯(疲れやすく、バテ気味なタイプに)

適応

  • 虚弱体質
  • 倦怠感
  • 体力低下
  • 元気がない

日常生活に疲れを感じ、バテ気味な方へ、体質改善とともに、疲れにくくなります。

精神の安定化作用も少なからず見られます。

神経内科疾患、精神疾患に伴う不眠症

むずむず足症候群にともなう不眠症

夕方、夜間に足を動かしたくなる衝動に駆られる感覚を起こす病気です。脊髄のドーパミン機能障害によるものと考えられています。

治療により不眠が改善される場合がありますので、気になる方はご相談を。

レム睡眠行動障害に伴う不眠症

レム睡眠中に夢と同じ内容に一致した行動をおこし、転倒や外傷などのリスクを伴う睡眠障害の1つです。

うつ病、統合失調症に伴う不眠症(精神疾患に伴う不眠症)

抑うつにともなう不眠症には抗うつ薬による加療で改善される場合があります。不眠症からうつ病と診断される場合も少なくありません。

幻覚や妄想による興奮が伴った不安、不眠は原疾患のコントロールが必要です。通常の睡眠薬のみでは不眠が改善されない場合があります。

認知症 せん妄に伴う不眠症

認知症の進行にともない、環境の変化や、昼夜逆転などが起こると、せん妄といって突然興奮したり、怒り出したりすることがあります。もちろんそうなると眠れないので、少量の抗精神病薬や、前述のベルソムラ、デエビゴ、ロゼレムなどを併用する場合があります。また、幻覚症状に漢方を使用する場合もあります。

こちらはまずは物忘れの評価のための受診をおすすめします。

補足

レム睡眠行動障害について

睡眠には、からだは休んでいるけれど、脳が活動している比較的、目覚めやすい浅い眠りのレム睡眠状態と逆に脳がゆっくり休んでいて、なかなか目覚めない深い眠りのノンレム睡眠状態があります。

ノンレム睡眠のときに体の成長や組織の修復、免疫力の維持などがおこると言われています。また夢を見るのは、レム睡眠のときで、精神的なストレスが多いと夢が増えると言われています。

このレム睡眠とノンレム睡眠が1日に数回繰り返されることで、脳とからだの両方が休まり、精神の健康に役立ってるということです。

レム睡眠行動障害は、明らかな原因はわかっていないことが多いですが、なんらかの原因で睡眠中には抑制されているはずの大脳からの指令が、脊髄を通って全身の筋肉に伝わってしまい、起こると言われています。

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